学生時代とMTGの話 後編

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(前回からの続き。未読の方はこちらから)

●暗礁
順調に思っていたが俺は知らないうちにミスを犯していた。

増加した注文に対して仕入れが追いつかず手持ちのカードをサラリーマンに売り過ぎてしまったのだ。

こうなると昼時間のトレードにも悪影響が出始めた。
トレードを持ちかけても相手の欲しいカードを俺が持っていないという事態が頻発する。こうなるとトレード自体が成立しなくなった。

金でカードを安く売ってもらうことも容易ではなかった。何しろ相手は別に金目当てで店に来ているわけではないのだから。

それに馬鹿高い店の定価でレアカードを買い戻す気にもなれなかった。それでは本末転倒に思えたからだ。

トレードが回らなければ受注を取ることもできない。色々と八方塞がりになっていた。




●Kとの出会い
しばらくしたある日Kという男と出会う。

そいつは俺の1つ下で当時中3だった。身長は低いが華奢でいかにも女子にモテそうな風貌をしていた。

Kにトレードを持ち掛けると俺は度肝を抜かれた。最新のあらゆるトップレアカードを数十枚単位で持っていたのだ。

Kは俺と違うタイプの同業者ですぐに意気投合した。

Kと親密になるとなぜそんなに高額レアカードを大量に持っているのかについて教えてくれた。Kの調達は俺には思いもつかない天才的な手法だった。



Kは最初は同級生との間でMTGを始めた。

そして昼休みや放課後に教室でMTGをしていると当然「何やってるの?」と興味を持つ他の学生が現れる。

やがて布教活動を経てクラス、学年全体にMTGを普及させた。

そしてK主催のMTG大会が頻繁に開かれた。参加費は数百円で成績上位者には強力なカードを賞品として与えて同級生たちを競わせた。

すると勝ちたい同級生は昔の俺のようにおもちゃ屋でブースターパックを買うようになる。
そして引き当てた高額カードをKが安いけど強いカードと交換する。

同級生たちはカードに個別に価格があることすら知らない。だが本人は実際に強くなり、結果的に同級生に勝てればそれで大満足なのだから問題はなかった。

こうしてKは学校という植民地を経営することで大量の高額レアカードを手に入れていた。



だが現金化するうえでKの風貌がマイナスに作用した。
夜時間にサラリーマンと商談するにはあまりに子供に見えてしまったため、ナメられたり足元を見られたりして相手にしてもらえなかったのだ。幸い俺はそこはクリアできていた。

こうして俺とKは手を組んだ。俺が夜時間にサラリーマンに売り、Kが在庫を手配した。




●遠征
これまでずっと同じ店で単独でトレードに明け暮れていた俺はKと組むことで、一匹狼ではなくなることで情報網と視野が広がった。

その過程で俺はカード価格の相場が街ごとに微妙に異なっていることに気付いた。

なぜ街ごとにカード価格が微妙に違うかについて結論から言うと、街ごとのチャンピオンが使うカードが異なるからだ。

例えばある街の大会で黒属性のカードを使ったプレイヤーが優勝する。
するとその店の他の大勢のプレイヤーはチャンピオンが作ったデッキを真似て同じような黒デッキを作り始める。
すると黒のカード価格がそのエリアだけ少し高くなる。そういう現象が街ごとに発生していたのだ。

大航海時代の交易のように、ある街で2000円のカードが別の街で3000円で取引されるというような極端な価格差も稀にあった。背景として当時はまだインターネットがそこまで普及していなかったこともある。

そこで俺とKはそれぞれの街の店のカード価格を調べた。
そしてある街で安くなっているカードを仕入れ、そのカードを別の街で高くさばいて、またそこで安いカードを仕入れた。

いわゆる三角貿易である。これは当たった。



次回最終回「夢の終わり」



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